「ここでしか買えない」という言葉に踊らされた衝動買い・・・

私が今でも悔やまれる一番の衝動買いをしてしまったのは、27歳のときです。当時の職場は九州のど田舎で小さなショッピングセンターしかなく、自分の満足のいく買い物ができないことをとても不満に思っていました。とくに洋服に関しては田舎のおばちゃんが着るような服しかなく、トレンド感などもってのほか。そんな状況ならネットで買えば良いのかもしれませんが、洋服は試着してから買う主義なので、高速バスで数時間の街に交通費も度外視で買い物に出かけていました。そんなとき、急に東京に出張する機会を得たのです。それはもう大喜びで、どこに行こうか何を買おうか、そんなことばかり考えて浮かれていました。
待ちに待った東京出張の日、数日間の滞在中に勤務時間内はみっちり研修で、夜は懇親会。買い物に行くなら今日しかないと、前泊した日の夜に買い物に繰り出しました。田舎者なのでまずは無難にショッピングビルに入り、九州では見たこともないブランドやメーカーの服に心躍らせながらウィンドウショッピングしました。そこで田舎者の私の感覚は東京の雰囲気にのまれて狂ってしまったのだと思います。
ちょうど探していた友人の結婚式に出席するためのドレスが目に入り、あるお店にフラッと入りました。個性的でセンスの良いドレスが多かったので真剣に見ていたところ、店員さんがにこやかに話しかけてきました。私もドレスは必ず買うと決めていたし、とても素敵な品が多かったので店員さんに相談しながら決めることにしました。その店員さんは自分も九州出身だから懐かしいと、とても親身になって相談に乗ってくれ、私の好みをうまく汲みながら商品を勧めてくれました。九州での買い物では感じたことのない心地よさに、「とてもいい買い物をしている」感覚が強くなっていきます。ドレスと羽織物が決まったところで、店員さんから「今日は普段着は探してないですか?」とにこやかに尋ねられました。何を買うかまでは決め手なかったですが普段着も欲しかったし、このセンスの良い店員さんが勧めてくるものを見てみたいという好奇心もあり、「探してるんですけど、何を買おうか迷ってて…」と答えました。今思えば、その好奇心が命取りでした。
店員さんは、ジャケット、トップス、ボトムス、小物を取り揃えて戻ってきて、それはもうステキなコーディネートでした。「このジャケットなら、さっきのドレスの上に羽織って式場までの移動中に使えますよ」「袖を折り返してまくれば、カジュアルにも着られます」「トップスもボトムスも単体でも使えるし、全部合わせてコーディネートもできますよ」と、とても魅力的な言葉で営業してきます。でも、本当に店員さんの言う通りでとにかくとてもステキだし、個性的だけど使いまわしやすいアイテムばかりでした。さすがに全部の商品を買えば予算を大幅にオーバーすることは私にもわかっていましたが、「このショップは九州だと福岡にしかないんですよ。しかも直営ではないので品数は少なくて」という一言で、私の財布の紐は一気にゆるみました。結局、勧められた全てのアイテムを予算の倍くらいの金額で購入しました。
そのときは大満足でホテルに戻って一人でファッションショーをしたり、とにかく「いい買い物だった」と舞い上がっていました。しかし、九州の田舎に戻っていざ購入した洋服を着ようとすると、自分の手持ちのアイテムと全く合わず着こなせないのです。そのとき初めて「あれは東京マジックにかかった衝動買いだったんだ」と気づき、しかも衝動買いによる散財で、しばらく節約生活が続くことがわかっていたので途方に暮れました。
このときのことが教訓で、都会に行っても雰囲気にのまれて「ここでしか買えない」に騙されることはなくなりました。よく考えれば、洋服以外にも東京でしか買えない物って限りなく存在します。そんなものにいちいちとらわれていては、いくらお金があっても足りないということに気づかされました。
私と同じように田舎の出身の人ほど、都会のキラキラした雰囲気に惑わされて衝動買いしてしまいがちだと思います。時間をかけなければ街に出られない人ならなおのこと、「ここでしか」「今しか」という限定感に踊らされてしまうかもしれません。でも、今のご時世大概のものはネットで買うことができます。洋服も試着するだけして、家に帰ってゆっくり考えたっていいんです。このことをあの日の私に教えてあげたいです。